たしかに、リスニングの仕組みって、あまり語られないですよね。
脳の話になって、小難しいですし。
しかし、ここでは、論文で裏づけしつつも、できるだけカンタンに、英語が聴ける仕組みを解説します。
リスニングを頑張るあなたのお役に立てれば幸いです。
その前に、まずはネタバレで…
1分で要点!
【手っ取り早く結論】
英語が聴ける仕組みを、カンタンに言えば、
☑ リスニング上達の仕組み = 4つの慣れ(4つの音の暗記)の向上
※4つ・・・単音/単語/文/文章・会話の4つの単位。
1分解説は以上です。
一見、当たり前に思えてしまいますが、意外に奥深いので解説していきます。
よろしくお願いします🙇🏻
☑ 本記事の内容(メリット)
- 上達に直結するリスニング学習ができるようになる
- 伸び悩んだ時に、原因が自分でわかるようになる
- リスニング学習に自信が持てるようになり、モチベも続く
☑ 本記事の信頼性
- 元イーオン英会話講師
- TOEIC980点
- 慶応義塾大学SFCにおいて:
第二言語習得研究に関する優秀賞を受賞
【実際の英会話の実力】
以上の「理論・研究」 と 「実践・現場」の両面から記事を書いています。
ちなみに、元々、私は、20歳以前は…
- センター試験で偏差値40台
- カタコト英語
で、全く英語が話せませんでした。身振り手振りと、知っている英単語を単発で連呼するだけでした。
英会話力が本当にゼロだった私でも、20歳(成人)以降から本格的に英会話に独学で取り組み、上記の音声レベルまでには上達しました。
ですので、ラクな道ではありませんが、あなたも、今から英会話を始めても確実に上達できます。
一緒に頑張っていきましょう!!
ちなみに
☑ リスニングの仕組みについての信頼性:
拙著CLAメソッドP30~54が裏づけです。
☑ CLAメソッド自体の信頼性:
CLAメソッドは、慶応大学の優秀賞を受賞した論文です。
※2013年(29歳)に受賞した理由 : 第二言語習得研究を目的に、25歳時に1年生として慶応大学に入学したため。
リスニングでは聴けなかったのに、文字を見たら分かる【英語あるある】
はい。
では、まずは身近な、
リスニングでは聴けなかったのに、文字を見たら分かる…
という、ナゾの「英語あるある」現象から解き明かしていきます。
分かりやすく面白い例として、
au三太郎のCM 「応援を応援したい」篇にて、桃姫の一言、、、
※以下、音声のみ抜き出し。[0:18] に、桃姫の生「ケイオス」あり。
chaosの英語的発音は、「ケイオス」。
chaosの日本語的発音は、「カオス」。
chaosの意味は、カオス(大混乱)。
日本語的発音「カオス」の音声暗記のままだと、
ケイオスって何?
ってなりますよね。
このカオスの例のような、
スペルを見れば知ってる単語なのに、聞き取れない(音を覚えていない)カタカナ英単語
または、
日本語的発音だけしか知らず、英語的発音とのミスマッチを起こした状態で暗記している英単語
を、カオスワードと勝手に命名しますw
ということで、まずは、このカオスワードを1つずつ退治していきましょう!
※今回、便宜上、勝手に命名したカオスワードの状態は、学術的には「中間言語(日本式英語発音)と本来の英語発音との、音韻ループ内ないしは長期記憶(ここではメンタルレキシコン)内における内的音声表象・音韻表象の乖離(その逆は一体化)」のように表現されます。あしからず。
具体的には、英単語の「意味と音」を覚えて、脳内に英語データをためていきます。
はい。
カンタンに言えば、学校で習ったような今までの日本語的発音から、英語的発音に覚え直すことです。
例えば、よく日常英会話で使われる、、、
Not at all.
「大したことないですよ。」
※転じて「どういたしまして。」
というリスニングの具体例を使って、説明してみますね。
「Not at all 」の英語的発音と、日本語的発音の違いを、以下を再生してリスニングしてみてください。
英語的発音「ナラロー」
と
日本語的発音「ノット アット オール」
の違いが、お分かり頂けたでしょうか?
日本語的発音「ノット アット オール」の音のまま覚えていたら、「Not at all」(ナラロー)という英語を聞いた時に、、、
「ん? ナラロー?奈良ロール? 知らない音だ… 分からん。」
となってしまいます。
ですので、
学習中に、「ノット アット オール」ではなくて、「ナラロー」と発音されていることに気づいたら、1つずつ修正していくことが重要です。
※この修正を繰り返すことで、今回の「t」(ト)の脱落音などの、音変化のパターンもわかってきます。
こんな感じで、まずは1つ1つ、英語の「意味」とともに、正確(英語的発音)な「音」も覚え直していきましょう!
実は、このように、英語の「意味」とともに、正確な「音」の記憶量を増やしていく作業が、リスニングを上達させるコツなんです。
そうですね。
私たちは、英単語の暗記は、学校でやってきたので慣れてますよね?
ですので、
その慣れている暗記を活用して、たとえば、「1語からの英会話」というアプリなどを、いわば音を暗記するための英単語帳としてとらえて、
音を暗記する感覚(ノリ)で取り組む方が、抵抗なくリスニングに向き合えるかもしれません。
まずは、「意味」は知っている英単語やフレーズは出てくると思いますが、バカにせずに、「音」を覚えるつもりで、上記のアプリ(1語からの英会話)などから始めてみてください!
4つの慣れ(4つの音の暗記)
その通りです。
結論からいえば、
総合的にリスニング力を向上させるには、英単語だけじゃなく、下記の4つの慣れ(音の暗記)が必要です。
- 単音レベル( abc )での慣れ
- 単語レベル(音・意味・文字)での慣れ
- 文レベル(文法・表現)での慣れ
- 文章・会話レベル(リズム・音変化・スピード)での慣れ
1つ目は、単音への慣れです。
日本語の「あいうえお」にあたる「ABC」の音自体に慣れるレベル(段階)です。
”英語あるある”として、日本の英語教育では、ここ(発音練習)が抜けたまま、単語を覚えてしまっている傾向にあります。
お恥ずかしい話、私自身も、半年間のニューヨーク留学後にも関わらず、「C」と「G」の違いをうまく言えずに絶望を味わいました。
それほど甘く見られがち、見落とされがちな初歩の慣れです。
考えてみれば当然で、「あいうえお(abc)」もうまく聞き取りや発音ができないのに、TVドラマや音声教材を聞き取ったり、会話ができるわけないですよね。
※ちなみに、abc などの「単音単位の、音の暗記」については、こちらの発音マスター記事で、フォニックス(スペルと発音との間のルール)も含めてカバーしています。
2つ目は、単語への慣れです。
ここは、さきほどの、カオスワードの話です。
単語は、正確な音と意味と文字(スペル)を三位一体で覚えることで初めて、使える英単語として記憶され、単語への聞き取り能力(慣れ)もアップします。
重要なことなので、強調します。
正確な音で覚える。
また、同じ単語に慣れれば慣れるほど、意味と音との結びつきが強くなります。
そうなると、いちいち日本語に置き換えなくても、聴いた瞬間に英語のまま理解できるという、うれしい現象が起こります。
例えば、イメージとしては、、、
「Fire ⇒ 火 ⇒ 火のイメージ」だった理解の流れを、「Fire ⇒ 火のイメージ」のように直接ひもづけ直していく。
そして、英単語・フレーズの聞き取りや発話使用の反復により、そのひもづけたパイプをさらに太くしていく。
そうすることで、心的イメージへの英語との直接的なつながり(母語の日本語を介さない理解回路)をつくっていくことができます。
つまり、頭の中で、和訳せず、英語を英語のまま理解し、日本語を介さずに英語を発話できるようになるわけです。
3つ目は、文への慣れです。
脳内には、言葉をループする機能があり、主に、そこで言語処理をしています。
その際に、どれだけの単語数を一度に保持できるのかが、理解度へ大きな影響を与えます。
それをリテンション(記憶保持)と言います。
そのリテンション能力を、リスニング教材などを通して、文単位で鍛(きた)えるのが、文への慣れです。
また、文法や決まり文句(フレーズ・チャンク)の表現を理解しているからこそ、文単位の音を聴いた時に理解することができます。
ですので、当然、ベースとなる基礎の文法力も必要になってきます。
※ちなみに、リテンション能力をアップするには、シャドーイング(影のように聞こえたモデル音声をマネして声に出す学習方法)が最適です。その理由と具体的なやり方は、こちらのリスニング上達記事へどうぞ。
4つ目は、文章/会話への慣れです。
英語のリズム(語調、強弱、抑揚なども含む)や、音変化、スピードへ対応するレベル(段階)です。
ゆっくりなモデル音声は聞き取れるのに、早口の映画は聞き取れない主な理由がコレです。
とくに、音変化が手ごわい。
なぜなら、リズム・スピードと違い、音変化のパターンを経験的に知らないとほぼ聞き取れないので。
例えば、日本語でも、「と言いますか」は、若者の間では「ってか」と言われることがありますよね。
このように、音変化への慣れ(経験的な理解)があるので、「ってか」のように、早口で音変化が起こっても理解することができます。
英語も同じで、「~したい」という意味の、「want to(ウォント トゥー)」が「wanna(ワナ)」に変化するという経験的な理解(慣れ)がないと、聞き取りは困難になります。
その経験的な理解(慣れ)の集積が、4つ目の「文章/会話への慣れ」です。
※ちなみに、音変化への慣れについての詳細(学習法や注意点)は、こちらの英会話の勉強法をまとめた記事へどうぞ。
以上の、4つの慣れが、英語を聞き取るために必要です。
ざっくり言えば、そうです。
※学術的には、「リスニングの慣れ」=「音韻情報の蓄積」。カンタンに言えば、「慣れ」=「音の暗記」。
※音韻・・・意味の区別に関係する最小の母音・子音の単位。音素(phoneme)ともいう。
そして、、、
その4つの慣れ(4つの音の暗記)を、アプリやリスニング教材で鍛(きた)えれば、総合的にリスニングが上達するわけです。
まとめると、
☑ リスニング上達の仕組み = 4つの慣れ(4つの音の暗記)の向上
ということです。
以上です。
次のチャプターは、もう一歩ふみ込んで、
脳内の言語処理の観点から、「慣れ」の正体を知りたい場合のみ、どうぞ。
6割の理解でOKです。マニアックなので(笑)
身近なメリットとしては、「なぜ、基礎がない時期に、聞き流しをしても意味(上達)がないのか?」の理由が分かります。
脳内に、9種類も音のデータがある!?
ここからは、もう一歩ふみこんで、専門の領域に入るので、目でさーーーーーーーっとナメるだけでOKです!
ここで感じてもらいたいことは、、、
いや~、脳内で、文法、文脈、背景知識とかも色々コラボしまくってリスニングが成立しとるから、そりゃ~、聞き流さず集中して聞かんとリスニング力が伸びんワケや!
ということです。
第二言語習得研究!!
そもそも知覚とは、外界の情報入力(インプット)に対して脳内データベースから関連データを検索・適用する作業である。音声の文脈で言えば、音声の知覚段階は、耳から聴こえた音声を、脳の中の言語処理システムにインプットし、どんな音が含まれているか分かることを意味する。言い換えると、音声知覚とは、耳で聞いた音声がどのようなものか判定し、それを脳の中で操作可能な音声形式に変換することである。この変換された音声形式は、一般に音声表象や、音韻表象と呼ばれている。
こうして取り込んだ音声に対し、理解段階では、その意味を理解するために各種の処理を総合的に行う。つまり、理解段階では、この脳の中で形成した音声・音韻表象をもとに、1.語彙処理、2.統語(文法)処理、3.意味処理、4.文脈処理、5.スキーマ(一般的常識や背景知識)処理、といった様々な操作を実行する。これらの処理を総合的に行うことで、音声の理解を行う。
※CLAメソッドP34より引用。
また、他にも、、、
脳内の音韻ループにて、約2秒間で音声入力を復唱できるスパンの拡大(リテンション能力・量の向上)を促すことで、理解処理の精度が上がる。
この拡大を実現するためには、リラックスして音声を聞き流すのではなく、集中を伴うシャドーイングなどのリテンションへの負荷の高い学習方法が不可欠。
※詳細は、CLAメソッドP44へ。
以上をふまえて、よく言われる、
リスニング力が伸びるかどうかは、聞いた量ではなく、集中して真剣に聞いた量で決まる
に、もう一歩ふみ込むと、、、
リスニング力が伸びるかどうかは、聞いた量ではなく、集中して真剣に聞いた量から得られた9要素の記憶量と運用処理力で決まる
と言えます。
9要素 : 英語の雑音処理回避、音韻情報(音変化パターン含む)、語彙、リテンション量、文法、文脈、スキーマ(一般的常識や背景知識)、パラ言語(感情情報)、ボディランゲージ情報
ですので、、、
当然、英単語(語彙)は1つの要素なので、重要ではあるものの、英単語だけを大量に暗記しても、他8要素も向上させないとリスニング力は上がりません。
※かつ、日本語的発音のまま英単語を暗記しても、英語の正確な音韻情報が増えないので、非常にもったいない。
また、BGMのように英語を聞き流しているだけでは、この9要素の記憶量と運用処理力(高速化と自動化)を、大幅に向上させることは期待できません。
やはり、上記したように、集中が必要ということです。
※集中、、、脳全体が活発で言語の内在化を促進している状態(レディネス)。
※厳密には、集中を伴う「内語反復」が必要です。詳細は、CLAメソッドP42~44へ。
例外ではないケース 赤ちゃんも、言語自体が生存戦略なので、集中どころか、命がけで音声を聞いているので、例外ではありません。
例外のケース 例外としては、この9要素の記憶量と運用処理力が高まった上級者であれば、英語の音声処理が自動化されているので、集中していないリラックス状態でも、自動的に新しい英単語や表現を収集することが可能になります。
くり返しになりますが、、、
この9要素の記憶量と運用処理力(高速化と自動化)が向上することで、リスニング力が向上します。
つまり、脳内における、音声の「知覚と理解」処理の高速化および自動化が向上するわけです。
実は、これが、リスニング力UPの仕組みであり、いわゆる「慣れ」の正体なんです。
上記では、
☑ リスニング上達の仕組み = 4つの慣れ(4つの音の暗記)の向上
のようにザックリと表現しました。
しかし、もう一歩ふみ込むと、
☑ リスニング上達の仕組み(慣れの正体) = 「脳内に蓄積した9要素の音韻データの運用力」の向上
なんです。
はい。
と、思ってしまいますよね。
ただ、よく他の要素を見てみてください。たとえば、パラ言語(声のトーンなどの感情情報)なんかは、日本語のコミュニケーションで、すでに相当マッチョレベルにまで鍛(きた)えられてますよね?
しかも、リテンション量や語彙の要素についても、「4つの慣れ」の学習時に並行して向上しますし。
いいたいことは、9要素のうち、「4つの慣れ」の音韻情報は、ボスキャラだということです。
そこを抑えてしまえば、あとは、サブキャラなので、比較的ラクに攻略できます。
しかも、自分が聞き取れない時に、その原因が「9つのうちどれなのか」おおよそ予想もつくようになるので、焦りもうすまりますし。
その点については、「赤ちゃんの自然習得」と「大人の学習による自動化」を分けて考える必要があります。
結論は、「インプットも重要ですが、大人は学習でOK」です。
その理由など、くわしくは、、、
≫【赤ちゃん英語シャワー(大量インプット) VS 大人筋トレ学習】その対立の先にあるもの
≫ 【超ガチ勢専用】英会話ペラペラまでの完全ロードマップ【1番濃厚】(リスニングパート)
こちらに、さらにもう一、二歩ふみ込んだリスニング上達の情報があります。
※ 小難しい内容なので、具体的な教材を目で楽しみつつ、「ひろい読み」でOKです。
最後に
おつかれ様でした。
ここまでディープに、リスニングの仕組み(メカニズム)を知ると、やることが多く感じて、手が止まってしまうかもしれません。
ですが、
まずは、カオスワードから、1つずつ丁寧にやっつけて行きましょう!
コツコツやっていると、
あっ!聞き取れた!
という、うれしい瞬間がたくさんやってきますので。
それでは、よい英語の旅を!
【お持ち帰り用】まとめ
リスニングの仕組み3つ
- カオスワードを、まずは退治する
- 4つの慣れ(4つの音の暗記)を向上させる
- 「脳内に蓄積した9要素の音韻データの運用力」を向上させる